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自然の愉しみかたを知る人たちvol.5
表 萌々花
自然の愉しみかたを知る人たち
vol.5 表 萌々花
旅をして、そこにある風景と人の営みを写真に残す

 

自分のペースや距離感で、自分にあった自然の愉しみかたを知る方に、自然との関わり方を尋ねるシリーズ「自然の愉しみ方を知る人たち」。第五回は、写真家の表 萌々花さん。気になった場所へは自分の足で訪れる。それは写真家として大切にしていることであり、写真家になる前から変わらないことの1つだ。
海外でのボランティア活動をきっかけに写真家の道へ
高校卒業後、アルバイトで貯めたお金を手に海外でのボランティア活動をスタートした表さん。インドネシア、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、ケニア、アイスランド、スペインなど15か国を巡った。そのきっかけになったのは、ルアンダに住む当時7歳の女の子との交流だったという。

「高校生のときに、国際NGOのワールド・ビジョンが行なっているチャイルド・スポンサーシップというプログラムに参加していたんです。貧困国の子どもに支援金を送るプロジェクトで、私のパートナーになったのがルワンダの女の子でした。私が送った支援金で、どんなことができたかというレポートが本人から送られてくるんですが、そのプログラムを通じてそういった活動自体に興味が湧いて。
母に将来は貧困国の子どもを支援する活動もしていきたいという話をしたときに、自分の目でその場所を見なくていいのかと言われ、そうだよなと。もともと海外留学のためにアルバイトで貯めていたお金を使って、ボランティアをしながらの旅に出ることにしたんです」

渡航前に、海外の団体との橋渡しをしてくれる、日本のボランティア団体に登録。数か国は事前に訪れる場所を決めておき、あとは現地で仲良くなった人の母国に訪れるなど、自由に気になった国を転々とした。

「まったく英語が話せなかったので、まずはインドネシアで少しの間、語学学校に通いました。ラオスでは牛が家に入ってこないためのフェンスを建て、ベトナムでは孤児院で子どもの世話をするなど、東南アジアではさまざまなボランティア活動に参加しました。ボランティアって参加費がかかることがしばしばあるんですが、中にはお金儲けのための活動もあったりして。現地に行ってみないとわからないことを知り、経験することができました。ケニアではジガー(人間の足に寄生するスナノミ)の問題があったり、私自身も熱帯マラリアに感染したり、自然の怖さも体感しました」
旅をしながらのボランティア活動を始めて約1年。最後にたどり着いたスペインで、写真家への道を歩む決意をすることになった。

「アフリカで仲良くなったスペイン人の友人の家に2週間ほど泊めてもらっていたんですが、あるとき、バルセロナで難民受け入れ要求のための抗議活動が行われたんです。数万人の人が集まったきっかけになったのが、雑誌の表紙になった1枚の写真だったという話をその友人から聞いて。私も何かを人に伝えることができる写真を撮りたいと思ったんです」
この日、このときの風景を未来に残す
2022年、表さんは写真集「星霜」を出版する。彼女の地元である飛騨高山を約3年かけて撮り続けたもので、自然の変化、生まれてくるものと朽ちていくものが写し出されている。

「もう亡くなられてしまったのですが、飛騨高山に田中一郎さんという写真家の方がいて。その方は飛騨高山の街や人をずっと撮り続けて、それを4冊の写真集にしているんです。その写真集に収められた、時代とともに変化していく街や風景の様子を見たときに、私はこれの続きが撮りたいなと思い、それが『星霜』に繋がっていきました」

同じ場所でも季節が変われば写るものが変わる。廃村を訪れると、足を運ぶ度に朽ちていくものがある。『星霜』には自然の風景とともに時間が収められている。
「写真集を出した2年後に、飛騨高山と長野県の松本を繋ぐ北アルプストラバースルートのプロモーションブックを作る依頼を頂いて。私の好きなものを好きなように撮ってくれればいいとのことだったので、そのときにも『星霜』を作った際に足を運んだ場所を訪れたんです。同じ場所に行ってもう一度写真を撮るという作業をしたときに、大きなものから小さなものまでたくさんの変化が見られて、撮り続けることに意味があるなと改めて感じました。そして、撮影をしながら、この場所は2年後、3年後、10年後にはどうなっているのだろうと想像を巡らせていました」
旅と写真と民藝品
撮影で訪れた場所で目にした、手仕事で作られた雑貨や民藝品を持ち帰り、写真展の際に展示販売するのも表さんの活動の1つ。過去にはメキシコ、チュニジア、モロッコなどを訪れ、今年3月にはエチオピアに足を運んだ。
「民藝品には、それがそこで作られている歴史的な背景だったり、土地とそこに暮らす人々や作り手との深い繋がりだったりがあります。たとえば、メキシコで訪れたラグの生産地ではもともと腰織りという伝統的な方法で織られていたのですが、ある村では侵略したスペインから入ってきた織り機が使われています。私は現地に行くまでそういった背景を知らずにいましたが、写真と一緒にそのラグがあることで、もっと多くのことを伝えられるのではないかと思ったのが、民藝品を展示販売するようになったきっかけなんです」

アトリエに飾られた、木彫りのコロポックルも思い出深い品。

「友人が取り壊しになる実家を整理していて出てきたコロポックルを、私が好きそうだからといってくれたんです。後ろを見たら“西山忠夫”と作者の名前がありました。調べてみると、西山さんは北海道・上川郡で民藝品店を長く営まれている方だということがわかって、居ても立っても居られなくなり、電話をして人形を持って会いに行ったんです。
なぜか自宅にまで招いて頂いて、西山さんと西山さんの奥さまと鍋を食べながら、いろいろな話を聞かせてもらいました。西山さんも世界中を旅するのがお好きだったようで“若いんだからたくさん旅をしなさい。写真家はどれだけ知らないものを見るかで変わるから”といったことを言われ、ますます旅への意欲が湧いて、写真を足で撮ることの大切さを再確認しました」
だから、表さんはカメラとともに何度も旅に出る。そして、帰りにはバックパックが民藝品でいっぱいになるのだ。

表 萌々花(おもて ももか)

海外でのボランティア活動をきっかけに、写真を撮るようになる。訪れた風土や土地の持つ空気感、時に厳しい現実や死生観を感じさせる作品を数多く発表。「目の前の日々を留めて置く作業」をライフワークとしながら、写真家として活動している。

Text:Fumihito Kouzu
Photo:Koji Honda