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山を歩いてたどりつく、天空の絶景温泉へ
渡辺裕美
渡辺裕美
山を歩いて野天風呂を訪ね、大地のエネルギーに触れる
2024.09.11
山歩きや外遊び後のお楽しみといえば、やっぱり温泉!下山後に浸かる温泉の爽快感は、言葉では表せないほど。そんな山歩き×温泉の遊びを一歩深めてくれるのが、山中にある野天風呂や秘湯を目的としたハイキング。絶景を眺めながら湯に浸かる、これほどの贅沢がほかにあるだろうか。
山歩きや外遊び後のお楽しみといえば、やっぱり温泉!下山後に浸かる温泉の爽快感は、言葉では表せないほど。そんな山歩き×温泉の遊びを一歩深めてくれるのが、山中にある野天風呂や秘湯を目的としたハイキング。絶景を眺めながら湯に浸かる、これほどの贅沢がほかにあるだろうか。
シラビソの森を歩いて温泉へアクセス
秘湯探検家の渡辺裕美さんに案内していただいたのは、八ヶ岳・硫黄岳直下にある「湯元
本沢温泉」。標高2,150mに位置する「雲上(うんじょう)の湯」は硫黄岳の爆裂火口の湯川に湧く温泉で、日本最高所にある野天風呂として山好きには知られたスポットだ。渡辺さんが、後半に紹介する“野湯”の世界に足を踏み入れる以前に「秘湯」という言葉に憧れて足を運んだのが、この「湯元
本沢温泉」。これをきっかけに山歩きありの秘湯巡りを始めたという、原点ともいうべき野天風呂なのだ。

「ロケーションのワイルドさ、人間の手が入っていないピュアな温泉のパワー……初めて訪ねたとき、『こんな温泉があるんだ!』って圧倒されたことを覚えています」
いわば、山の中にある野天風呂の醍醐味を教えてくれた本沢温泉。稲子湯近くのゲートからみどり池を経て3時間程度のハイキングでアクセス可能(最速ルートは本沢温泉入り口から徒歩2時間程度)で、登山道はよく整備されており、山小屋に宿泊できる気楽さもある。
「道中の風景もハイカーをわくわくさせる美しさに満ちていて、初めて山歩きをする方も楽しく歩けるはず。本沢温泉はビギナーの方にぴったりのスポットだと思います」
「道中の風景もハイカーをわくわくさせる美しさに満ちていて、初めて山歩きをする方も楽しく歩けるはず。本沢温泉はビギナーの方にぴったりのスポットだと思います」


ゲートからしばらく林道を歩くと苔むした針葉樹の森が現れ、ようやく八ヶ岳らしくなってくる。ときにニホンカモシカが顔を覗かせたり、ウソやアカゲラの鳴き声が響いたり。時期によっては、八ヶ岳の固有種であるヤツガタケキンポウゲほか、可憐な高山植物に出合えることも。目的地までのアクセスで、その地域固有の風景を味わい、自然に親しむことができるのも野天風呂ハイキングのお楽しみといえるだろう。
「山を歩いていると、少しずつ植物や鳥の名前が頭に入ってきます。その時期・その地域に特徴的な自然を理解できるようになると、野天風呂までのアクセスそのものがぐっと楽しくなるんですよ」
「山を歩いていると、少しずつ植物や鳥の名前が頭に入ってきます。その時期・その地域に特徴的な自然を理解できるようになると、野天風呂までのアクセスそのものがぐっと楽しくなるんですよ」




なんて贅沢!絶景を独り占めしながら湯に浸かる
3時間足らずで「湯元
本沢温泉」に到着。まずは受付で入浴料を払う。受付のある施設内には内湯「こけももの湯」があり、こちらは「雲上の湯」とは異なる泉質の源泉を掛け流しで楽しめるので、時間があればこちらにもトライしてみたい。さて、目的地の「雲上の湯」まではさらに登山道を登る。崩れやすいトラバースの道を渡ると、目の前に突如、硫黄岳のダイナミックな山容が現れる。滔々と流れる沢の横には、木製の浴槽がぽつんと設けられていて、まさしく絶景の秘湯!一風呂のために3時間歩く価値あり、と思わせる壮大なロケーションだ。ここで渡辺さんはさっそくゆあみ着に着替え、「いただきます!」と湯船に浸かる。


その合間にも、バッグパックの“お風呂セット”から取り出したpHセンサー計と温度計で泉質と湯温をチェック。センサーに表示されたpHは3.4。ということは……?
「肌にやさしい弱酸性の湯ですね。火山の麓にある温泉は大抵、酸性に傾きますが、pH3.4ならこのロケーションにしてはマイルドな肌あたりではないでしょうか。源泉温度は50度ですが、浴槽内は40度前後。のんびり浸かれる湯温です」
「肌にやさしい弱酸性の湯ですね。火山の麓にある温泉は大抵、酸性に傾きますが、pH3.4ならこのロケーションにしてはマイルドな肌あたりではないでしょうか。源泉温度は50度ですが、浴槽内は40度前後。のんびり浸かれる湯温です」


ここでおもむろに源泉をテイスティング。
「硫化水素の味ときついエグみ、苦味を感じます」
こうして泉質を知ることが、固有の動植物の名前を知るのと同様、その土地に親しむための手がかりになるのだとか。
「硫化水素の味ときついエグみ、苦味を感じます」
こうして泉質を知ることが、固有の動植物の名前を知るのと同様、その土地に親しむための手がかりになるのだとか。
山の奥地の秘湯から、野湯へ
12年前、初めての「本沢温泉」探訪をきっかけに、本格的に秘湯にハマっていった渡辺さん。ついには会社を辞め、バックパックを担いで“野湯の聖地”と謳われる東北へ温泉巡りの旅に出てしまったほど。岩手県の八幡平では、まるで天然のジャクジーのように大地からぼこぼこと乳白色の湯が湧き出す温泉に行き合った。広大な山の斜面には特徴的な景観を備えた温泉がいくつも点在していて、しかもそれぞれ湯温が異なっていた。そんな湯に包まれながら眺めるご来光の、なんと美しいことか!
「温泉が流れ落ちる滝、紅葉の森に包まれた野湯……東北の自然に感動しながら、毎日違う温泉に浸かりました。野湯のなかには温度調節ができないところもあり、浸かれないほど高温の温泉もあります。けれども生まれたての源泉をその場で感じる体験は格別です。ダイナミックな地球の生命力に包まれる感じ」
「温泉が流れ落ちる滝、紅葉の森に包まれた野湯……東北の自然に感動しながら、毎日違う温泉に浸かりました。野湯のなかには温度調節ができないところもあり、浸かれないほど高温の温泉もあります。けれども生まれたての源泉をその場で感じる体験は格別です。ダイナミックな地球の生命力に包まれる感じ」

こうしてどんどん奥地へ、人が足を踏み入れないエリアを目指すようになり、いつしか“野湯”の世界にどっぷりとつかっていた。野湯とは「大自然のロケーションにあり、人間によって管理されていない(源泉を利用した施設がない)温泉」のこと。山中や川べり、海の近くといったアクセスしづらいロケーションにあることから秘湯と混同されることもあるが、管理のある・なしが野湯と秘湯の違いだ。野湯のキーワードは「大自然」と「ありのまま」。手つかずの自然のなか、大地の割れ目から温泉が湧き出している野湯は、温泉大国・日本の底力を感じさせてくれる、この国ならではの資源なのだ。
「一昔前に一大秘湯ブームで知られるようになった野湯 は全国に300以上あるといわれています。ですが、日本の各地にはいまだ知られざる野湯が数えきれないほど眠っています。野湯を探しながら地図を眺め、現地までのルートを考えながらロケーションやその泉質を想像すると、ワクワクが止まりません」 地図上でおおよそのポイントを推測したら、現地に出かけて地元の人にヒアリングし、GPSを片手にヤブを漕ぎ、道なき道を進んで発見するという野湯。もはや「湯に浸かる」というより、「新たな野湯の発掘調査」といった趣だが、古い文献をあたったり、グーグルアースをチェックして山の斜面に石灰華が出ているところを探したり、研究者顔負けの熱意で臨むリサーチも含めて、「野湯は生きがい」なんだとか。
「一昔前に一大秘湯ブームで知られるようになった野湯 は全国に300以上あるといわれています。ですが、日本の各地にはいまだ知られざる野湯が数えきれないほど眠っています。野湯を探しながら地図を眺め、現地までのルートを考えながらロケーションやその泉質を想像すると、ワクワクが止まりません」 地図上でおおよそのポイントを推測したら、現地に出かけて地元の人にヒアリングし、GPSを片手にヤブを漕ぎ、道なき道を進んで発見するという野湯。もはや「湯に浸かる」というより、「新たな野湯の発掘調査」といった趣だが、古い文献をあたったり、グーグルアースをチェックして山の斜面に石灰華が出ているところを探したり、研究者顔負けの熱意で臨むリサーチも含めて、「野湯は生きがい」なんだとか。

みんなで守る野湯&野天風呂、自然を慈しむ心を忘れずに
野湯への尽きることのない好奇心の根底にあるのは、自然への深い敬意だ。野天風呂に浸かる前の「いただきます」という挨拶にも、渡辺さんが抱く気持ちが現れている。ここで、野湯や野天風呂を楽しむマナーや心構えについて聞いてみよう。
「大自然から湧き出る温泉ですから、自然の恵みをいただくという感謝の気持ちを忘れずに。スペースが限られていますから、譲り合いの精神をもって、『みんなで自然を享受する』というスタンスで臨んでいただきたいと思います。土地によってはローカルのルールも存在します。“郷に行っては郷に従え”で、その土地の文化をリスペクトしたいものです。野天風呂では管理する施設のルールに従って。野湯の場合、洗剤・石鹸類の使用は厳禁、ごみを残さない、植生を大切にするというのは山歩きと同様です」
キャパシティ以上の人が訪れて混乱を引き起こしたり、トラブルを招いたりという事例が相次いでおり、閉鎖されてしまった野湯も少なくない。自然の湯をあるがままの姿で楽しむ野湯や野天風呂の文化を次世代に残すためにも、自然ファーストの気持ちで出かけよう。
「大自然から湧き出る温泉ですから、自然の恵みをいただくという感謝の気持ちを忘れずに。スペースが限られていますから、譲り合いの精神をもって、『みんなで自然を享受する』というスタンスで臨んでいただきたいと思います。土地によってはローカルのルールも存在します。“郷に行っては郷に従え”で、その土地の文化をリスペクトしたいものです。野天風呂では管理する施設のルールに従って。野湯の場合、洗剤・石鹸類の使用は厳禁、ごみを残さない、植生を大切にするというのは山歩きと同様です」
キャパシティ以上の人が訪れて混乱を引き起こしたり、トラブルを招いたりという事例が相次いでおり、閉鎖されてしまった野湯も少なくない。自然の湯をあるがままの姿で楽しむ野湯や野天風呂の文化を次世代に残すためにも、自然ファーストの気持ちで出かけよう。

抜群のフィット感で重さを感じさせない「ジェイド」
渡辺さんが野湯や野天風呂巡りをする際に携行する装備はレインウエア、ヘッドランプ、行動食、エマージェンシーキット、カメラ、日焼け止め、タオルに加え、サンダルやゆあみ着、“お風呂セット”など。この“お風呂セット”には先ほど登場したpHセンサーや温度計が入っている。さらにごみ袋、虫対策セットも欠かせない。
「実は温泉好きの虫って少なくないんですよ。たとえば炭酸ガスにはアブが、硫化水素にはユスリカが寄ってきます。こういう虫による害を防ぐためにも、虫除けや痒み止め、バグネットなどを持ち歩くといいでしょう」
「実は温泉好きの虫って少なくないんですよ。たとえば炭酸ガスにはアブが、硫化水素にはユスリカが寄ってきます。こういう虫による害を防ぐためにも、虫除けや痒み止め、バグネットなどを持ち歩くといいでしょう」

こうした必携装備をすっぽり収められる、温泉巡りのパートナーが「ジェイド」。山歩きを始めて最初に購入したバックパックがグレゴリーの製品で、以来、グレゴリーのバックパックを愛用している。愛用の理由は、グレゴリーらしい安定感と抜群のフィット感。加えて、この「ジェイド」は山歩きでの需要を考えられたポケット、大きく開いて中のものを取り出しやすいU字型のコンパートメントがポイントだそう。

「もう一つ、お気に入りのポイントが、通気性を考慮したメッシュ性のバックパネルです。きちんと背中にフィットするのに、メッシュ性だから肌に張り付かない。背中とバックパネルの間にいつも空気が流れているような心地よさはこの時期の山歩きにぴったり」
お気に入りの「ジェイド」にいつもの装備をパッキングしたら、渡辺さんの旅の準備は完了!さて、次はどこの野湯を訪ねよう?
ズール/ジェイドをすべて見る>>
お気に入りの「ジェイド」にいつもの装備をパッキングしたら、渡辺さんの旅の準備は完了!さて、次はどこの野湯を訪ねよう?
ズール/ジェイドをすべて見る>>

渡辺裕美(わたなべ ゆみ)
奈良県出身。温泉ソムリエの資格を持つ秘湯探検家。会社員時代に体調を崩した際、心と体の不調を癒した温泉パワーに開眼。全国各地の温泉巡りから始まり、現在は誰も行かないような秘湯や野湯を見つけては、GPSアプリを片手に探訪している。
これまでに巡った温泉は2500ヶ所以上。アウトドア誌『BE-PAL』(小学館)の連載『YOOMI’S そろそろソロ秘湯』など、メディアでの発信多数。著書に『わたしのしあわせ温泉時間』(メディアソフト)、『絶景温泉ひとり旅
そろそろソロ秘湯』(小学館)、監修に『行きたい!残したい!すごい温泉100』(イカロス出版)がある。
Text:Ryoko Kuraishi
Photo:Hinano Kimoto
Photo:Hinano Kimoto