千年を超えて生きる。
島の象徴「屋久杉」の凄さとは

屋久島と聞けば、ほとんどの人が苔むした森に佇む「屋久杉」を思い浮かべるだろう。今回の旅の案内人・国本真治さんと訪れた“まだ知らない、屋久島”を紹介する前に、まずは島の象徴ともいえる屋久杉について触れておきたい。
「勘違いされている方が意外と多いですが、屋久島に生えている杉のすべてが『屋久杉』というわけではありません。樹齢1,000年以上の天然杉を『屋久杉』、それより若い天然杉を『小杉』、植林されたものを『地杉』と呼び分けています」
1993年に世界自然遺産に登録された屋久島。周囲約130kmの島には、海岸線から山々が一気にせり上がり、最高峰の宮之浦岳は標高1,936mに達する。そのダイナミックな地形から、“洋上のアルプス”とも呼ばれ、黒潮が運ぶ温かく湿った空気が山にぶつかることで多くの雨が降り、豊かな森を育んできた。
その森を象徴する存在が、樹齢1,000年を超える屋久杉だ。栄養分の乏しい花崗岩の山地に根を張り、長い年月をかけて成長していく。
「とても成長が遅いぶん、年輪が密に詰まり、丈夫で美しい木目に育ちます。樹脂を多く含んでいて、腐りにくいのも特徴です」
江戸時代には屋久杉を加工した「平木」が年貢として納められるなど、島の人々の暮らしを支えてきた。現在伐採は行われていないが、山に入れば、かつて伐採されて残されたままの切り株や倒木などの「土埋木(どまいぼく)」を見ることができる。
「屋久杉の工芸品には、主にこの土埋木が使われています。そこから抽出される精油もあるのですが、香りがとてもいい。森林浴をしているような深い香りに癒されます」
その名に侮るなかれ。屋久杉原生林の中心地「ヤクスギランド」


屋久杉のなかでも、とりわけ有名なのが「縄文杉」や、ハート型に見える空洞で知られる「ウィルソン株」だ。しかし縄文杉までは荒川登山口から往復約22km、10時間ほどを要する。
「僕は島でホテルを運営しているのですが、縄文杉を見に行った宿泊客の方が、翌日は疲労でまったく動けないという姿を何度も目にしてきました。旅の行程に余裕がない、あるいは体力に自信がない方には『ヤクスギランド』をおすすめしたいです。
テーマパークのような名前で損していますが(笑)、実際は屋久杉の原生林を歩ける本格的な自然休養林。屋久島で原生林がいちばん残っているのがここです。30分から210分まで5つのコースがあり、仏陀杉やくぐり杉など、個性豊かな巨木を見ることができます」

屋久島を象徴する屋久杉。その森を歩くことは、屋久島を知るうえで欠かせない体験のひとつだ。しかし、島のおもしろさはそれだけではない。
案内してくれたのは、出版社「Kilty BOOKS」を営む国本真治さん。旅雑誌や書籍を通じて、屋久島の自然や文化、環境保護の現状などを発信する一方、妻のミキさんとともにヨガスタジオを併設したホテル「Ananda Chillage」も経営している。
移住してからまだ数年ながら、島の自然やインフラ、島民性、動物や虫事情まで熟知。行く先々ですれ違う島民と挨拶を交わす姿からも、すっかり島に馴染んでいるようだ。そんな国本さんがおすすめする10のスポットを、前編・後編の2本立てで紹介する。
❶滝壺から見上げる、
大迫力の「大川の滝」

別名・水の島と呼ばれ、数多くの河川や滝が流れる屋久島。そのなかでも栗尾(くりお)にある落差88mの「大川(おおこ)の滝」は、国本さんの一番のお気に入りだ。
「というか、大川の滝は、僕が思う日本の滝ランキングで断トツ1位ですね。この規模と水量で、滝壺まで歩いて真下から見上げられる滝ってそうそうないですから。豊富な水が飛沫を上げて落ちるさまは圧巻です」

大川の滝から車で1分ほどの場所には、湧き水が汲める「大川湧水」もある。
「そこかしこに水が湧いているので、島民は基本的に飲み水を買いません。ちなみに僕の移住の決め手のひとつとなったのも、屋久島の水。もともと軟水が好きなのですが、ここの水は体にすごく合っていて、調子もいい気がします」
島内各地で湧き出る水は、硬度約10mg/Lの軟水で、口当たりがまろやかだ。せっかくなので、いつでも湧水を汲めるよう、マイボトルは必携で。屋久島の自然の恵みをぜひ味わってみてほしい。
❷島の恵みを醸した
「キャッチザビア」のクラフトビール

2017年に小瀬田(こせだ)にオープンした屋久島初のマイクロブルワリー「Catch the Beer(キャッチザビア)」。屋久島の水を仕込み水に使い、島ならではのビールを醸している。
瓶詰め時に糖分と新鮮な酵母を加えて、密栓した瓶の中で再発酵させるベルギーの伝統製法「瓶内二次発酵」を採用。自然な発泡ときめ細やかな泡立ち、深い味わいが特徴だ。
「屋久島産のタンカンや地杉、苔・シダ・土壌などから採取した天然酵母まで。副原料に屋久島由来の素材を取り入れた自然発泡ビールは観光客や愛好家にも人気で、島のローカル文化の先駆け的な存在でもあります。僕が運営するホテルでも提供していて、お客様からの評判もいいです」
❸ローカル御用達。
「湯泊温泉」のワイルドな露天風呂

屋久島には多くの温泉が存在するが、とくに南部にはワイルドな露天風呂がある。湯泊(ゆどまり)温泉だ。
「湯泊温泉は、隣にある平内海中温泉よりも混んでいない穴場の温泉。ただ通常利用される本湯ではなく、本湯からさらに海側へ歩いた入江のそばにある『先の湯』へ行ってみてほしい。先の湯は実質野良温泉のような扱いで、ほぼローカルの人しか利用しておらず、絶景を静かに楽しむことができますよ」
「泉質はアルカリ性単純温泉で、つるつるした肌触りが気持ちいい。そして温泉横の海は島民のシュノーケリングスポット。夏は目の前の海で泳いだ後、そのまま温泉に入って帰るのがローカルの恒例です」
❹「滝之川の一枚岩」で、
かつて海底だった地層に触れる

島の南東部・安房に流れる清らかな滝乃川。その川床に広がる大きく平べったい岩は「滝之川の一枚岩」と呼ばれ、屋久島の地質を身近に感じられる場所のひとつとされている。
「屋久島は、島そのものが巨大な花崗岩の塊のような特殊な土地。山間部では花崗岩の一枚岩が見られますが、滝乃川の一枚岩は黒っぽい堆積岩でできています。これは、数千万年前に海底に砂や泥が堆積してできたもの。かつて海の底にあった地層が、いまこうして地上に現れていると思うと、ロマンがあります。
川の水量が少ないときは、この上で子どもたちを遊ばせたり、寝そべったりもできる。実際に触れて、体で屋久島を感じてみてください」
「アリオ」を背負って
屋久島を気ままに、軽快に巡る
今回の旅で、国本さんが背負ったのはグレゴリーの「アリオ20」。軽量でコンパクトながら、快適な背負い心地を追求したバックパックだ。
最大の特徴は、背中とバックパックの間に空間をつくる独自のメッシュパネル。パックと背中が直接密着しない設計で、背面の通気性を高め、汗をかいてもストレスフリー。さらに、伸縮性のあるヒップベルトが腰を包み込むようにフィットし、歩行時のパックの揺れも軽減する。
軽いハイキングから街の散策まで。屋久島を自由気ままに巡る旅にも、ちょうどいいサイズと機能を備えている。
アリオ24
追加の収納に便利なストレッチメッシュのマチ付きフロントファブリックスタッフポケットを備えたアリオ24は快適性と通気性を最適化し、ハイキングの必需品を外出先でも簡単に取り出せるように設計された軽量デイパックです。











